経済コラム「日本経済 快刀乱麻」

Vol. 50 新学期に思う――大学で「生きた経済」を学べるように

(2014年4月22日)

今年も新学期の季節が巡ってきました。今週から大阪を往復する生活が再び始まり、私が教鞭をとっている大阪経済大学のキャンパスは新入生を迎えて華やいだ雰囲気に包まれています。やや緊張した面持ちで歩いている新入生らしき大勢の学生の姿、その新入生を勧誘するサークルの出店が並ぶ光景などを見ていると、毎年のことながら、こちらも改めて新鮮な気持ちになり、自分の何十年か昔(!)を思い出します。

それだけに、これらの学生たちが生きた経済をしっかり学んで社会に巣立っていってもらいたいと強く願わずにいられません。以前のこのブログでも書きましたが、現在の日本では、大学に入るまでの中学・高校で「経済」に関する教育は十分とは言えません。

現在実施されている高校の学習指導要領では、「公民」の中の一つの科目として「政治・経済」がありますが、単位数は2単位とされており、ほかの主要科目と比べて授業時間が少なくなっています(世界史B、日本史B、地理Bなどは4単位)。

それに「政治・経済」の中でも、まず政治が先で、経済はその次というケースが多いようですから、経済についての授業は実質的には半分以下、つまり1単位分以下のウエートといってよいでしょう。しかも「政治・経済」は選択科目ですので、ほとんど経済を勉強しないまま、大学に入学してくる学生が多いのが実情です。

(これは「歴史や地理、政治の授業を減らせ」と言っているではありません。経済の授業が少なすぎることが問題なのです。)

そのうえ、内容にも問題があります。数社の「政治・経済」の高校教科書を買ってきて内容を比べたことがありますが、いずれも経済に関する記述は経済用語の説明が簡単にまとめられている程度です。現実の経済がどのような仕組で動いているのか、日本経済がどのような状況にあって、それが自分たちの生活にどのように影響しているかなど、生きた経済を学べる内容になっているとは言えません。

ましてや、株式市場や株式投資についての記述はほとんどないに等しいのです。ぜいぜい「株式会社とは」や「バブル崩壊で株価が下がった」程度です。学校教育の現場では、株などについて教えるのは好ましくないという雰囲気が強いそうです。

こういう実態ですから、いわば、それを大学4年間で取り戻すというか、“空白”を埋めるのは容易ではありませんが、学生たちには出来るだけ生きた経済、特に株式市場の役割について学んでもらい、経済についての理解力や判断力を身につけてもらおうと努力しています。

大学で教えるようになって、今年で早9年目を迎えましたので、すでに多くの学生を社会に送り出したことになります。ある卒業生に「(私の)授業で学んだことが今役立っています」と言われたことがありますが、大学でまいた種の中から、社会で少しでも多くの花が開くことを願ってやみません。(岡田晃)

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*本稿は、ストックボイスHPのコラムに掲載した原稿(4月11日付け)を転載したものです。

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