経済コラム「日本経済 快刀乱麻」

Vol. 29 アベノミクスといえば大阪・アベノ!?

(2013年8月13日)

現在、大阪の大学で教鞭をとっているため、毎週、東京から通っていますが、そのほかに講演などで地方に出かける機会が多くあります。地元の経済団体や企業などの集まりで「日本経済の見通し」などについてお話しするのですが、逆に参加者の方から地方の実情について生の声を聞いて、こちらが勉強させられることもしばしばです。各地域の歴史や文化に触れることができるのも、地方に出かける楽しみです。こうして得た地方の情報や発見したことなどを取り上げていきます。

第1回は、大阪・阿倍野です。
 アベノミクスが脚光を浴び始めた今年はじめ頃、市場関係者の間で一つのジョークが話題になりました。大阪・阿倍野のお好み焼き屋さんが大変な人気になり、店の前に行列ができるほどでした。中でも一番の人気メニューがミックス焼き。名づけて「アベノミックス」――。取材に来たテレビ局のスタッフに「商売繁盛ですね。これで大阪の景気も良くなりますよ」と言われ、店の親父さんが答えて言いました。「いやあ、大したことおまへん。アベノミックスいうても、お好み焼きだけに所詮コテ先や」。

まあそれはともかく、アベノミクスは決して小手先ではありません。これについて論じるのは本コラムの趣旨ではありませんので省略しますが、阿倍野はたしかに元気です。

実際に今、阿倍野で人気の的になっているのは「あべのハルカス」と近鉄百貨店本店です。あべのハルカスは、近畿日本鉄道が1300億円を投じて建設中の超高層複合ビルで、地上60階建て、高さ300メートル。横浜ランドマークタワーを抜いて日本一高いビルとなります。このビルの低層階部分に近鉄百貨店が先行入居し、6月にオープンしました。

「日本一滞在時間の長い百貨店」というのがコンセプトで、日本で最大規模のレストラン街、子どもの遊び場や広場を多くとるなど、従来よりもターゲット客層を広げています。開業以来、連日大変な賑わいで、開業から1ヶ月間の売上高は100億円に達し、従来の阿倍野本店の前年同期に比べて6割増、来客数は2.4倍となったそうです。

ちょうどこのタイミングの7月16日、東証と大証が現物株取引を統合したのに伴い、これまで大証単独上場だった近鉄百貨店も東証上場となりました。あべのハルカス効果もあって、東証への統合直後から株価が急騰、売買高も急増しました。期せずして全国区に登場した形で、一段と注目を集めています。

今後は、隣接する旧阿倍野本店の改装を順次進め、あべのハルカス本店とつなげて2014年春までに新装リニューアルを終える予定です。完成後の営業面積は10万㎡となり、日本最大となります。そして近鉄百貨店が入居した「あべのハルカス」には高級ホテル、美術館、展望台、オフィスなども入る予定で、これも2014年春に全面開業となります。

このように注目を集めている阿倍野ですが、あべのハルカスの向かい側に昨年春にオープンした新型商業施設「あべのキューズモール」がすでに新しい人気スポットになっているのです。郊外型ショッピングモールのような店舗スタイルや渋谷「109」の進出などで話題となり、若者から高齢者まで幅広い客層を集めています。

もともと阿倍野は、キタ(梅田)、ミナミ(難波・心斎橋)に次ぐ第3のターミナルですが、キタやミナミに比べてやや立ち遅れていました。大阪では梅田地区でも百貨店や大型商業施設の新規オープンやリニューアルオープンが相次いでおり、地域間競争はますます激しくなりそうです。こうした競争が全体として大阪の消費市場を活性化する効果は大いに期待できるところで、アベノミクス効果に乗って阿倍野が巻き返しに成功するか、今後も見守っていきたいと思います。

*本稿は、株式会社Fanetが運営する資産運用応援サイト「Fanet Money Life」の「日替わりコラム」に掲載した原稿(8月2日付)を転載したものです。
http://money.fanet.biz/study/2013/08/post-11.html

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