経済コラム「日本経済 快刀乱麻」

Vol. 39 意外に良くなっている地方の景気だが……

(2014年1月22日)

年明け早々、講演で地方に出かけてきました。講演では「昨年からのアベノミクスによる景気回復の動きは2014年も続く」とお話しして、講演後の賀詞交換会にも参加しましたが、会場は明るく盛り上がっていました。

地元の市長さんが「市内の各地域や各種団体の賀詞交換会に行くと、どこも例年になく多くの人が出席していて、活気が感じられる」と語っておられました。景気回復の波は地方にも及んでいることを実感しました。

これはデータからも裏付けられます。その一例として、昨年12月に発表された日銀短観(全国企業短期経済観測調査)の結果を見てみましょう。新聞などでは、全国大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス16となり、2007年12月以来、6年ぶりの高い水準となったことが大きく報じられました。

このDIは、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数字で表わし、数字が大きいほど景況感が良いことを示しています。12月の結果は、アベノミクスによって企業の景況感が大幅に改善していることを裏付けたわけですが、中でも注目されるのは地方の改善です。

これまで地方の中でも景気回復が遅れていた四国のDIは全産業でプラス7と、5年ぶりにプラスとなりました。また従来は大手家電メーカーの業績不振の影響を受けて低迷が続いていた近畿もプラス2と、6年ぶりにプラスとなりました。これで全地域でプラスに転換したことになります(図表1)。

特に好調なのが北海道と東北です。北海道の業況判断DI(全産業)はプラス15、東北は12で、いずれも1991年以来、実に22年ぶりの高水準を記録しました。そのうち北海道は製造業ではプラス17となり、製造業では全国を上回りました(図表2)。

こうしてみると、思った以上に地方の景況感はよくなっていることがわかります。景気回復の裾野は着実に広がっていると言っていいでしょう。これをうけて日銀は1月16日に発表した地域経済報告(さくらレポート)で、5地域の景気判断を引き上げ、全国9ブロックすべての地域で「回復」との表現を入れました。これは、同レポートを公表開始した2005年4月以降で初めてです。

しかしその一方で、地方では「景気回復の実感がない」という声もよく聞かれます。今回の講演の際も「むしろ円安による原材料のコストアップで大変だ」「4月の消費税引き上げが心配」という経営者もいました。

やはり長年にわたる経済低迷で苦しんできた地方の経営者にしてみれば、多少改善したといっても「まだ半信半疑」というのが正直なところなのでしょう。

その意味では、多くの地方の企業が景気回復に確信が持てるような、成長戦略の追加策が必要です。昨年に大きく転換した景気回復の流れを確実なものにするには、もう一押し必要なのです。

安倍首相は6月に「新・成長戦略」をまとめるとの考えを明らかにしていますが、それによって地方のマインドをしっかり前向きに転換させるよう期待したいものです。

*本稿は、株式会社Fanetが運営する資産運用応援サイト「Fanet Money Life」の「今日のコラム」に掲載した原稿(1月20日付)を加筆修正したものです。
http://money.fanet.biz/study/2014/01/post-120.html

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