経済コラム「日本経済 快刀乱麻」

Vol. 43 新刊発売に思うこと

(2014年2月28日)

このたび、新刊『やさしい「経済ニュース」の読み方』(三笠書房)を発売しました。

この本は、よく報道される経済ニュースを題材に取り上げて、日本経済の全体像をつかめるようにやさしく解説しつつ、ニュースを理解するためにどのような見方・読み方をしたらよいかの“コツ”をまとめました。また全体を通して経済の仕組みや基礎知識を得られるような構成になっています。

この本を書いた動機は、少しでも多くの人に「経済は面白い」と感じてもらい、日本経済の健全な発展と投資家のすそ野を広げたいという思いからです。

日本では、「経済ニュースは難しい」というイメージが強く、経済に詳しい人や投資家などと、そうでない人との間で、経済についての基礎的知識や認識のギャップが大きいのが実情です。そのため時には、経済や投資についての誤ったイメージが独り歩きしたり、株式投資のすそ野がなかなか広がらないなどの問題点があります。

これには様々な原因があると思いますが、学校教育のあり方が原因の一つとなっていると思います。そもそも中学や高校の教育で、経済についての授業は「政治・経済」という科目の一部を構成しているに過ぎず、しかも選択科目なので、「政治・経済」を履修しない生徒も少なくありません。

さらに「政治・経済」の教科書を見ると、経済用語の説明がほとんどで、世の中の実際の経済がどのようなすくみで動いているのか、それが自分たちの生活や将来にどのようにかかわっているのかを理解させるような内容になっていません。ましてや、株や株式市場、株式投資に関する記述はほとんどありません。これでは、生きた経済を学ぶことは困難だと言わざるを得ないでしょう。

経済は、あらゆる人にとって、その生活や仕事に大きく影響するものであり、本来はきわめて身近なジャンルであるはずなのに、この程度の教育しか受けてきていないのです。

聞くところによれば、学校教育の現場では「現実の経済、特におカネに関することを教えるのは拝金主義につながるので好ましくない」との風潮があるそうです。そうだとすれば、とんでもない誤解であり、そういった現状から変えていく必要があるとつくづく思います。

メディアの報道姿勢にも責任があると思います。私自身、長年にわたってメディアで経済報道に携わり、多くの人に経済ニュースに関心を持ってもらいたいと思いながら仕事をしてきましたが、一部メディアの中には必ずしも的確な経済報道を行っていないケースが時々見受けられます。

日本経済と株式市場の健全な発展のためには、多くの人が経済についての正しい知識と認識を持てるようになり、的確な判断力を養うことが不可欠です。今回の新刊が、その一助となれば幸いです。

*本稿は、ストックボイスHPのコラムに掲載した原稿(2月21日付)を転載したものです。
http://www.stockvoice.jp/modules/weblog/details.php?blog_id=2512

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