経済コラム「日本経済 快刀乱麻」

Vol. 37 連載・マスコミとの付き合い方
第3回 社内取材が決め手

(2014年1月14日)

先月号の本連載「テレビ広報の重視を」の中で、映像を意識した情報発信と、テレビ局や各番組の特徴をつかんで効果的に売り込むことが重要だと書きましたが、問題はその売り込むべきネタをどうやって用意するかです。

そのようなネタは、広報担当者がいくら待っていても自然に入ってくるものではありません。社内のどこに、そのようなネタがあるのかを発掘しなければなりません。社内取材です。

普段から社内取材をしていれば、「これはテレビ向きで面白い」とか「これはあの番組が良さそうだ」など、さまざまなネタが見つかるはずです。すぐにネタにならなくても「しばらく温めれば数ヵ月後にモノになりそうだ」など、手持ちのネタをいくつも持てて、効果的にネタを売り込むことができます。

例えば、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト(WBS)」に「トレンドたまご(トレたま)」というコーナーがあります。このコーナーは、新技術やアイデアを使ったユニークな商品・サービスの「たまご」を紹介するというコンセプトです。したがって、すでに広報がニュースリリースを書いて大々的に発表したものではなく、これから売り出したいものをいかに社内で発掘して番組に売り込むかが大事なのです。

社内取材を通じて、社内人脈を広げることにも役立ちます。社内のどこにどんな人材がいて、何をしているのかについても幅広く把握できるようになれば、メディアからリクエストがあったときに、的確な担当者を記者に紹介し取材してもらうことが迅速にできるようになります。

企業がメディア、特にテレビに露出するにあたって、「人」の要素は重要です。経営トップが経営について語るだけではなく、例えば新製品開発を担当した若手社員が開発の苦労を語ることは非常に効果的です。視聴者や消費者に対して、商品の特徴をより印象付けるとともに、その企業に親近感を持つきっかけにもなりえます。

社内取材が重要なのは、テレビ向け広報に限らず、新聞など他のメディア向けも同じです。この連載の第1回「広報は『窓口』にあらず」で、積極的に情報発信していく「攻めの広報」が必要だと強調しましたが、そのためにも手持ちの情報を数多く持っていなければなりません。社内取材によって得たさまざまな情報を取捨選択しながら、広報戦略に沿って情報発信していくことが重要です。

広報担当者が社内取材を積み重ねることは、実はメディアの側にとっても重要なのです。

私の日本経済新聞とテレビ東京での長年の経験から正直に言いますと、「この広報担当者はデキるな」「この会社の広報は頼りになる」と思うケースと、逆に感じる場合の両方ともよくありました。

多くの場合、その差は社内を把握しているかどうかによるものだったと思います。それは普段からその企業や広報担当者を接していると、自ずとわかってくるものです。

「取材」が大事なのは、記者も広報担当者も同じです。社内を足で稼ぐ取材をぜひ心がけてください。

*一般財団法人・経済広報センター発行の『経済広報』2013年12月号(12月1日発行)に掲載された原稿を転載したものです。
http://www.kkc.or.jp/pub/period/keizaikoho/pdf/201312.pdf

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