令和の日本経済は必ず復活する
――“過度な悲観論“から脱却しよう!
令和の時代に入ってから、米中貿易戦争の激化をはじめ、英国EU離脱をめぐる混迷、中東情勢の緊迫、そして日韓関係の悪化など世界情勢は一段と波乱の様相を呈し、日本経済への影響も懸念されています。
しかし現在の日本経済は、実は世間のイメージ以上に強さを取り戻しつつあることを強調したいと思います。平成最後の数年間にアベノミクスによって景気回復が進む中、日本経済は構造的に立ち直り、これまでには見られなかったような新しい変化が生まれ始めているのです。
例えば、最近の日韓関係の悪化は日本の産業の強さを浮き彫りにしました。日本政府が韓国向け輸出管理を強化した3つの半導体素材(レジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミド)で、日本企業は世界市場の90%以上など高いシェアを占めています。つまり韓国のサムスン電子はこれら素材を生産する日本企業なしには半導体を生産できないのが実態です。
半導体の生産をはじめ、極めて高品質で多様な素材・部材と超微細な加工技術が必要なITの幅広い分野で、日本の電子部品や素材、化学、精密機械などのメーカーは強みを発揮しているのです。
このことは、日本企業が他に代替のきかない技術と生産体制を確立していることを示しています。これこそが真の「オンリーワン技術」であり「オンリーワン経営」です。日本企業がこのような強みを身につけたのは、バブル崩壊後の経済低迷が続く中で、懸命に技術を磨き、真の意味でのリストラ(事業の再構築)を推進して、新しいビジネスモデルを築き上げてきたからにほかなりません。
また訪日外国人増加による経済効果も、従来にはなかった新しい変化です。これは単なる消費の下支えにとどまらず、地方経済や第1次産業の活性化、新しい輸出産業の創出など日本の産業構造をも変えうるインパクトを持っています。
これらの新しい流れは令和の時代にしっかり引き継がれ、日本経済は本格的に復活を遂げることができると確信しています。
しかしこうした側面は、メディアなどであまり注目されていません。その影響のためか、いまだに「日本経済は衰退している」「日本企業の競争力は低下した」と思っている人が多いのが実情です。むしろ、そうした「過度な悲観論」こそが、日本経済にとって壁になっていると言っても過言ではないでしょう。
振り返れば、日本は幕末・明治以来、何度も危機に直面しましたが、それを乗り越え、むしろ強くなってきたという歴史があります。私はそれを“150年のDNA”と呼んでいます。近著『明治日本の産業革命遺産 ラストサムライの挑戦!技術立国ニッポンはここから始まった』(集英社)でその原点を描いたのですが、現在の私たちもその“150年のDNA”を受け継いでいるはずなのです。
私は日本経済新聞とテレビ東京で、長年にわたり日本経済と数多くの企業を取材してきました。その経験をもとに現在、メディア媒体での執筆や講演を通じて情報発信を続けていますが、常に独自の視点で「令和の時代に日本経済は復活する」という明るい展望を示し、皆さんに元気になっていただくことをモットーとしています。
中には「楽観的すぎる」と感じる方もおられるかもしれませんが、あえて「日本経済の復活」の可能性に焦点を当てることで、「過度な悲観論」から脱却してほしいと考えているからです。
皆さんが、日本経済の底力に自信を持って、令和の新時代を切り開いてほしいと心から願う次第です。
令和元年(2019年)9月
岡田 晃