経済コラム「日本経済 快刀乱麻」

Vol. 48 連載・マスコミとの付き合い方
第6回 記者の反応を見て世間の反応を知る

(2014年4月2日)

スポーツ競技では、試合前に対戦相手チームや選手の特徴や強み弱みをよく研究して戦術を組み立てることは常識です。企業の広報担当者にとってメディアは勝ち負けを争う相手ではありませんが、広報の効果を上げるにはメディアのことをよく研究しそれに対応した戦術をとることが重要です。

そのためには、メディアがどのようなニュースに関心を持っているか、どのようなネタがニュースになりやすいかなどについて、これまでの記事の扱いについてよく研究しましょう。自社や同業他社だけに限らず、企業ニュースを幅広く拾って「傾向と対策」を練ることが必要です。

ただ、メディアの関心といっても各社によって違いますし、テレビなら番組によっても違いがあります。それぞれの特徴をしっかり把握しておけば、「このネタはあの番組に売り込むのが効果的」などの判断がつきやすくなります。

各メディアを研究することには、もう一つ重要な側面があります。それは、世間の反応を知るということです。ある企業のあるニュースについて、各メディアが前向きな記事を書いたのか、ネガティブな扱いなのか、それによってメディアがどのように評価しているかがわかります。

あるいは、そのニュースを取材しているときの記者の反応も参考になります。広報担当者が「このネタはいけるぞ」と勢い込んで説明しても記者の反応が今一つで、記事の扱いも期待したほどではなかったなどという経験はありませんか。逆に「こんなネタがこんな大きな扱いになるのか」と意外に思ったこともあるかもしれません。

乱暴に一言で言えば、それが世間の反応だということです。もちろん「その日はたまたま他に大きなニュースが多かった」など、その時々の事情に左右されることもあるでしょうし、あるいは担当記者が理解不足というケースもあるかもしれません。不勉強な記者を擁護するつもりは全くありませんが、そうしたことも含めて世間の反応をよく把握したうえで、さらなる広報活動を進めていく必要があるのです。

このことについて別の表現を使うなら、広報担当者は世間の反応を真っ先につかむことのできる立場にいるわけで、それを社内にフィードバックしていく役割も担っていると言えます。この連載の第1回で「広報は単なる取材の窓口ではない」と書きましたが、外の空気を社内に取り入れる「窓」であることは間違いありません。

広報担当者は、そのような世間の反応を的確につかみ社内にフィードバックしていくためには、メディア・記者との信頼関係を築くことが重要です。それには、日常的な情報交換や意見交換が必要ですし、たまにはノミニケーションもいいでしょう。しかし基本はこの連載で書いてきたようなことが大事で、それを日頃から実践することを通してお互いの信頼関係が築かれるものだと思います。

日本経済がようやく低迷から脱して元気を取り戻しつつある現在、企業が的確に情報を発信していくことの重要性は一段と高まっています。広報担当者のみなさんが一段と奮闘されることを期待して、この連載を終わります。

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*本稿は、一般財団法人・経済広報センター発行の『経済広報』2014年3月号(3月1日発行)に掲載された原稿を転載したものです。
http://www.kkc.or.jp/pub/period/keizaikoho/pdf/201403.pdf

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