経済コラム「日本経済 快刀乱麻」

Vol. 66 株価2万円は「バブル」なのか?

(2015年5月8日)

日経平均は4月に入って終値ベースでも2万円台を回復しましたが、その後は再び2万円を下回った水準での展開が続いています。しかし株価は昨年以来、急ピッチで上昇を続けていましたので、一時的な調整はやむを得ないところでしょう。いずれ再び2万円をつけたあと大台を固め、さらに上昇していくと見ています。

ところで、2万円回復をめぐって「今の株価はバブルではないか」とのメディア報道が目につきます。先週も書きましたように、これまで何度も株価上昇後の急落で痛い目に遭ってきた投資家も、2万円を経験したことのない若い投資家も、今の水準はどうも落ち着かない人が多いようです。そんな気分が「バブル」と警戒する空気につながり、一般メディアの一部報道にもそれが反映しているのかもしれません。

しかしバブルかどうかについては本来、相場過熱の状況、企業収益や経済実態に対しての株価水準などを評価したうえで論ずるべきものです。これも何度か指摘してきましたが、例えば前回2万円に乗せた2000年当時、景気が回復したと言っても金融機関の不良債権問題は未解決で、デフレが進行中、ミクロで見ても日本企業の多くは「3つの過剰」をまだ抱えたまま改革は進んでいませんでした。そんな中でITだけが脚光を浴びていたもので、株価上昇もIT関連の銘柄の急騰が相場全体を引き上げていたのでした。まさしくIT「バブル」だったわけです。

今回はアベノミクスによって消費、生産、雇用など景気回復が広がりを見せており、ミクロでも企業の改革が進んでいます。PERでみても、2000年当時は東証1部で100倍を軽く超えていましたが、現在は高くなったと言っても18倍程度です。これに対して「18倍はすでに割高」という見方もありますが、私は現在のようなモメンタムの中では決して割高とは見ていません。本格的な上昇相場は始まったばかりであり、バブルを心配する必要が出てくるとすれば、それはずっと先のことでしょう。

いずれにしてもこのような議論なら妥当なのですが、実際にはどちらかというと感覚的なバブル論が多い印象を受けます。しかしそのような発想で「2万円はバブル」と片付けてしまっては、日本経済の転換という歴史的な変化を見落とすことになりかねません。

そもそも我々日本人の間には、株価が上昇するとすぐに「バブル」と言って、まるで株価上昇が良くないことであるかのようなムードがあります。これもやはりバブル崩壊の「後遺症」「トラウマ」なのでしょうか。

そしてメディアの一部には、そうした傾向を助長するような論調も見られます。それに加えて、一部には株式市場や株式投資についての無理解や偏見を感じるときさえあります。メディア出身者として、また現在もメディアを通して活動している立場として、これはとても残念なことだと思います。

メディアは、現在の株価上昇がどのような意味を持っているのか、株式市場が経済全体の中で果たしている重要な役割や、株価と実体経済との関係についてもっと読者や視聴者の理解を深めるような報道を進めてほしいものだとつくづく感じます。

*本稿は、株式会社ストックボイスのHPに掲載したコラム原稿(2015年4月17日付)を一部修正したものです。

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