経済コラム「日本経済 快刀乱麻」

Vol. 57 FOMC予想外?の結果でも株高・円安

(2014年9月24日)

注目されたFOMCは予想外の結果でしたが、それを受けた市場の反応は理想的な展開となりました。

今回の最大の焦点は、声明文で「相当な期間ゼロ金利を継続する」との文面を変更するかどうかでした。市場では、FRBがこの文面を削除または修正して利上げに前向きな姿勢を打ち出すのではないかとの観測が強まっていましたが、結果は予想に反して修正なしでした。

これによって、FRBが利上げを急がないとの見方が優勢となり、株式市場に安心感が広がりました。17日のNY市場でダウ平均が上昇、これを受けて18日の日経平均は178円高となり、1万6000円台を回復しました。

ただ利上げが遠のくとすれば、為替ではドル安となってもおかしくないところでした。しかし為替市場は、FOMCメンバーによる金利見通しが従来より前倒しになったことに着目し、ドル高に反応しました。

こうして株高・円安という、日本にとっては理想的な展開になったわけです。「いいとこ取り」と表現をしているメディアもありました。

今回の動きを見ていてちょうど1年前を思い出しました。昨年は5月にバーナンキFRB議長が初めて量的緩和(QE3)縮小・終了の可能性に言及して以来、一時は市場が動揺して株安・ドル安となる場面がありましたが、次第にそれを消化し、9月のFOMCでQE3縮小を決めるとの予想が市場のコンセンサスになっていました。ところが、この時のFOMCはQE3縮小を見送りました。この予想外の決定に市場は混乱し、株価が下落、為替はドル安・円高となったのでした。「悪いとこ取り」になってしまいました。

このように1年前と今回を比べると、金融政策の方向については事前の予想と結果は同じパターンでしたが、市場の反応は正反対だったわけです。その違いはどこから生まれたのでしょうか。さまざまな要因があるでしょうが、根本的には米国の景気が1年前より確かなものになっていることと、金融政策の転換を市場が消化するようになってきたことが挙げられると思います。「景気回復を背景に来年の利上げは間違いないが、FRBは急がない」――こんな安心感が株高・ドル高につながっていると言えるでしょう。こうしたことから考えると、緩やかな米国株上昇と円安の流れはそう簡単には崩れないと見ることができます。

そうなると、あとは日本の国内景気が焦点です。19日午後には8月の全国百貨店売上高が発表されます。すでに今月初めに大手5社が発表した8月の実績では、5社とも増税後に初めてプラスになっていましたが、全国ベースではどの程度回復しているか注目されるところです。なんといっても消費の回復が最大のポイントですから、当分は消費関連の指標に要チェックです。

国内でもう一つ注目されるのは、円安による企業業績への影響です。最近は円安によるマイナスの影響を懸念する声が上がっていますが、それでも円安が輸出企業の業績を押し上げることは間違いないところです。10月の決算発表シーズンになれば主要企業の通期業績見通しの上方修正に期待したいところです。

*本稿は、ストックボイスHPのコラムに掲載した原稿(9月19日付け)を転載したものです。

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