経済コラム「日本経済 快刀乱麻」

Vol. 45 連載・マスコミとの付き合い方
第5回 危機対応で試される広報の実力

(2014年3月14日)

非常に残念なことですが、企業の不祥事が絶えません。企業としては不祥事を起こさない努力が不可欠なのは当然です。しかし不幸にして不祥事が起きてしまった時、広報担当者はどのような対応をすべきでしょうか。

不祥事には①不祥事の内容②不祥事発生を受けた対応――の2つの側面があります。実は、①よりも②で失敗して事態を悪化させるケースが少なくありません。逆に事後の対応が適切だった結果、危機を乗り切った事例もあります。

つまり、不祥事発生後の対応いかんが企業の命運を分けるのです。そのカギは情報公開です。メディアにいた人間としてそれを強く感じます。不祥事の事実関係、社内調査の現状、原因と責任の所在、再発防止策などについて、迅速かつ的確に情報発信していかなければなりません。この点で広報担当者が果たすべき役割は大きいものがあります。

中でも重要なのが、初動です。前述の②で失敗したケースを見ていると、そのほとんどが初動で失敗しています。初動の基本は、①うそをつかない②隠さない③先送りにしない――の3つで、私はこれを「初動3原則」と呼んでいます。一見当たり前のように思えますが、ついつい都合の悪い情報は公表をためらったり先延ばしにしがちです。それは逆効果で、後から事実が明らかになる方が傷が大きくなるものです。

例えば、早い段階で「明らかになった1件の他には問題がありませんでした」と発表していたものが、その後に「実は他にも数件ありました」、しばらくすると「さらに他にもありました」となるパターンです。ウソをつくとか隠すなどの意図はなかったのかもしれませんが、多くの場合、マスコミはそう受け取りませんし、「情報を小出しにした」との悪い印象を与えるのはたしかです。

初動次第で流れが決まってしまうのです。数年前、こんな例もありました。あるメディアがある企業の不祥事の事実をつかんで周辺も取材し、そのうえで事実関係の確認を求めてきました。ところが、その問い合わせを受けた広報担当者なのか、担当部署の段階だったのか、明確な回答をすぐに行わなかったそうです。

結局そのメディアが見切り発車の形で特ダネ記事にして、それを受け会社は事実を認めました。これは最悪のパターンです。せめて記事になる前に会社側から発表すべきでした。

不祥事は企業にとって一つの危機ですが、危機を表わす英語Crisisという言葉の語源をご存知でしょうか。「病気などが快方に向かう転換点、病気の峠」です。つまり危機を乗り切るかどうかが企業の転換点になるのです。

危機は不祥事だけでなく、予期せぬ事故やトラブルなで生じることもあります。そうした危機対応の際には、この連載で書いてきたトップとの直結や社内取材の重要性がはっきり表れます。広報担当者は日頃からそうした他社の過去のケースをよく研究して、「わが社だったら」とシミュレーションをしておく必要があります。危機の時こそ広報の実力が試されるということを常に意識して、備えをしておきましょう。

*本稿は、一般財団法人・経済広報センター発行の『経済広報』2014年2月号(2月1日発行)に掲載された原稿を転載したものです。
http://www.kkc.or.jp/pub/period/keizaikoho/pdf/201402.pdf

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『明治日本の産業革命遺産――ラストサムライの挑戦!技術立国ニッポンはここから始まった』