経済コラム「日本経済 快刀乱麻」

Vol. 44 連載・マスコミとの付き合い方
第4回 経営トップとの直結が不可欠

(2014年3月14日)

最近、企業のトップがカメラの前で頭を下げる光景が再び目立つようになってしまいました。大変残念なことです。しかし企業トップの本来の仕事は、胸を張って自社の経営戦略や展望を語ることであるはずです。それには普段からトップがもっとメディアに登場することが必要です。

特にトップがテレビに出演することの広報効果は絶大です。トップが語る内容はもちろんのこと、表情やしぐさも含めて、情報発信になるのです。視聴者に直接語りかけることで説得力を増すことが出来、視聴者に親近感をもたせて企業イメージの向上につながる効果もあります。

米国では企業トップが毎日のように経済専門チャンネル「CNBC」に出演し、四半期業績や経営戦略について熱っぽく語っています。「CNBC」は朝から夜まで24時間にわたって経済ニュースを流し大変影響力の大きいメディアですので、幹部がいつでもすぐに出演できるように、自社内に中継施設を自前で作っている企業も少なくありません。それほど米国企業は「トップ広報」を重視しているのです。

これに比べると日本では、経営トップのメディアへの登場頻度はまだまだ少ないと感じます。広報担当者は自社のトップをもっとテレビや新聞などに引っ張り出すようにしてもいいのではないでしょうか。

中には、メディアへの登場を渋るトップもいるかもしれませんから、そういうトップを説得してその気にさせなくてはなりません。そのためには、普段からトップと差しで話しが出来る関係を築くことが大事です。

特に不祥事が起きたときに、それが問われます。不祥事が起きた場合に、的確な情報発信と対応が必要となりますが、広報がトップと直結していなければ迅速な対応が取れなくなりますので、トップとの直結は不可欠です。

以前に不祥事が起きたことのある企業の広報責任者が、その時の裏話を後になって明かしてくれたことがあります。不祥事が明るみに出た直後、広報責任者が記者会見に社長に出てもらうように話をしたところ、社長は「なんで俺が恥をかかなきゃならないんだ」と怒鳴りつけられたそうです。しかしその広報責任者は「社長が記者会見に出ないと事態はもっと悪化する」と判断して、社長を根気よく説得した結果、社長が記者会見に出席して事態を乗り切ることに成功したそうです。

どの企業でも、これぐらい広報担当者がトップと直結している体制を望みたいところです。そしてそれは不祥事対応だけではなく、普段から必要なことです。広報が日頃から経営トップの考え方や行動を正確に把握し、それをもとに外部に対し迅速に情報発信していくことが大事です。

逆に、メディアの側から見ると、広報担当者がトップと直結しているかどうかはすぐにわかるものです。これは、それぞれの企業が広報をどれぐらい重視しているかを反映するものでもあります。広報担当者の立場から見れば、広報の重要性についての認識を社内で高める努力を進めることが、トップとの直結体制の確立につながるものだといえるでしょう。

*本稿は、一般財団法人・経済広報センター発行の『経済広報』2014年1月号(1月1日発行)に掲載された原稿を転載したものです。
http://www.kkc.or.jp/pub/period/keizaikoho/pdf/201401.pdf

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