経済コラム「日本経済 快刀乱麻」

Vol. 41 百貨店戦争「大阪の陣」はますます熾烈に

(2014年2月28日)

JR大阪と三越伊勢丹ホールディングスは共同運営する百貨店「JR大阪三越伊勢丹」の売り場面積を6割減らすと発表、三越伊勢丹が事実上撤退することが決まりました。

三越伊勢丹はJR大阪駅の全面リニューアルに合わせて、同駅の北側に連結する形で、4年前の2011年5月に新規オープンしたばかりでした。三越と伊勢丹の経営統合後初の新規出店、両方の名前を入れた店舗も初めてということで、大いに注目を集めたものです。

開業当初は、ちょうどその1か月前に大阪駅をはさんで南側の大丸梅田店がリニューアルオープンし、大阪駅もリニューアルされて駅上部の連絡デッキで三越伊勢丹側ともつながるなど、相乗効果もあって多くの人出でにぎわっていました。

三越伊勢丹は、三越の得意とする呉服や宝飾品、伊勢丹のファッションの両方の強みを生かした「ダブルブランド」戦略をとってきました。しかしこれが逆に裏目となったようです。消費者に中途半端な印象を与え、アベノミクスという追い風をうまくいかせませんでした。

大学の授業などでいつも大阪に行きますので、そのついでによく各店舗をのぞいてみるのですが、いつの間にか、南側の大丸のにぎわいに比べて北側の三越伊勢丹は閑散とした店内が目立つようになっていました。

やはり大阪では「三越」のブランドは通用しなかったということでしょうか。東京では圧倒的な強みを持つ伊勢丹ブランドも大阪の壁は厚かったようです。

特に三越にとっては、大阪は因縁の地になってしまった感があります。かつては北浜に店を構えていましたが、阪神淡路大震災の影響で撤退していました。そこでこれまで何度も大阪再進出を狙って動いてきましたが、なかなかうまくいかず、やっと実現したのがJR大阪三越伊勢丹だったのです。いわば再チャレンジの地だったのです。だがそれも、わずか4年で失敗に終わったことになります。

JR大阪駅のある梅田地区はここ数年、百貨店の新規開業やリニューアルが相次ぎ、競争が激化していました。2011年4月に大丸梅田店が全面増床リニューアル、その1か月後の5月にJR大阪三越伊勢丹が新規開業、さらに翌2012年11月には阪急うめだ本店が全面増床リニューアルして、話題を集めました。

各社の競争が相乗効果を発揮し、全体として大阪、特に梅田への集客力を高める効果がありました。日本百貨店協会の調査によると、2013年の全国の百貨店売上高は1.6%増加しましたが、大阪地区の増加率は5.4%に達しました。

大阪駅周辺では百貨店のほかに、「ルクア」や「グランフロント大阪」などの大型ショッピング街が新規開業したことも加わり、梅田周辺は活況が続いています。このような活発な消費が大阪経済を引っ張っていると言えます。

ただ実はその分、百貨店各社が過当競争に陥っているのが実情です。「勝ち組」となったように見える大丸梅田店や阪急うめだ本店も、目標には達していないのです。大丸梅田店は目標額670億円に対して今期の見通しは622億円、阪急梅田本店は2130億円に対して1880億円にとどまっています(日本経済新聞)。それほど、競争が激しいことを示しています。

梅田だけではありません。今年3月に超高層複合ビル「あべのハルカス」が全面開業します。高さ300メートル、日本一高いビル内に近鉄百貨店本店がすでに部分開業していますが、全面開業すると売り場面積は国内最大となります。同ビルの話題性もあって昨年の部分開業以来、客足は伸びており、全面開業で一段の増加が見込まれています。

梅田 vs 阿倍野などの地域間競争も加わって、大阪百貨店戦争はさらに熾烈さを増していくことになりそうです。

*本稿は、株式会社Fanetが運営する資産運用応援サイト「Fanet Money Life」の「今日のコラム」に掲載した原稿(2月19日付)を転載したものです。

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