歴史コラム「歴史から学ぶ日本経済」

Vol. 35 「明治日本の産業革命遺産」の地元の一つ・佐賀を再訪問、遺跡で‟新発見”も

(2019年02月25日)

先ごろ、拙著『明治日本の産業革命遺産 ラストサムライの挑戦!技術立国ニッポンはここから始まった』(集英社)に関連した講演のため佐賀市を訪れました。

同書では全8章のうち1章分を割いて、幕末の佐賀藩が近代化の先頭を走っていたことを記述しましたが、講演では、今日の日本経済の基礎を作った明治維新と「明治日本の産業革命遺産」(2015年に世界遺産に登録)の歴史的意義についてお話しし、地元政界・財界関係者など参加者の方々に「先人たちの挑戦から学んで日本経済再生の先頭に立ってほしい」とエールを送らせていただきました。

講演の前後には、佐賀県の山口祥義知事への表敬訪問をはじめ、拙著(前掲)の取材でお世話になった関係機関や関係者の方々へのご挨拶に回りました。山口知事は、昨年の「明治150年」の記念イベントが大盛況となったことを機に、これを佐賀の活性化につなげていきたいと熱心に語り、最後には山口知事自らが拙著を手に持って記念撮影に応じてくださいました。

佐賀県の山口祥義知事=右=と(佐賀県庁で)

また佐賀新聞社も訪問しましたが、ここでは逆に拙著について取材を受け、その際の記事がこのほど佐賀新聞に掲載されました。

昨年に出版した拙著『明治日本の産業革命遺産』の執筆に当たっては全国8県・23構成資産を取材して回りましたので、それぞれ各地元の関係者の皆さんにお世話になりましたが、こうして出版後に改めてお目にかかって情報交換の機会を持てることは大変うれしいものです。拙著を読んだ地元の方や多くの人が先人たちから元気をもらい、それが日本経済の活性化につながることを心から願っています。

今回の佐賀訪問ではもう一つ嬉しいこと(ラッキーなこと!)がありました。同書でも紹介した三重津海軍所跡(「明治日本の産業革命遺産」の一つ)を再訪問したところ、ちょうどドックの発掘調査をしていたのです。三重津海軍所跡は普段は遺跡保存のため発掘されたドック跡を埋め戻しているため地上には公園になっています。しかしタイミングよく地中の遺構まで土が掘り下げられていたため、初めてこの目で遺構の実物を見ることができました。

発掘調査中の三重津海軍所跡(佐賀市)=写真画面中央部のアップが下の写真

三重津海軍所は佐賀藩が幕末に建設した軍艦建造・修理のためのドックと海軍訓練所で、日本の造船業の先駆けとなったものです。ドックはもともと西洋でも明治以降の日本でも通常は、石または煉瓦で側壁を作っていましたが、三重津海軍所は丸太や板材など木材を組んで階段状にして土を固めて作るというユニークなもので、確認されている限りでは日本で(もちろん海外でも)他に例がありません。このことは、日本の在来技術を活用しながら、西洋の最先進技術を導入して新しいモノづくりに挑戦したことを示しています。この点がまさに世界遺産登録の重要な要素となっているのです。それをこの目で直接見ることができて、新しい発見をしたような気分になり、思わず興奮してしまいました!

このような「明治日本の産業革命遺産」に関連する調査は、他の地域も含めこれからも進んでいくことでしょう。今後もフォローしていきたいと思っています。

*同じ記事を公式ブログ「経済のここが面白い!」にも掲載しています。
https://ameblo.jp/okada-economics/

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