歴史コラム「歴史から学ぶ日本経済」

Vol. 7 「産業革命遺産」を世界遺産に~「国民会議」が発足

(2013年11月19日)

先日、本コラムで「日本のものづくりの原点『産業革命遺産』」について書いたたが(9月29日付け)、その世界文化遺産への登録を支援する「産業遺産国民会議」がこのほど発足した。

「明治の産業革命遺産」は、軍艦島の名前で知られる端島炭坑(長崎県)や長崎造船所、八幡製鉄所など、九州・山口を中心とする8県の28の施設で構成されており、幕末から明治にかけて日本の近代化の基礎を作った跡を物語るものだ。

今年9月に日本政府が世界遺産への推薦を決め、2015年の登録をめざしている。「国民会議」はそれをバックアップするとともに、登録を目指す国民運動を展開するために設立された。

このほど開かれた設立大会には、名誉会長に就任した今井敬氏(元経団連会長)、会長の小島三菱商事会長をはじめ、経済界トップや地元自治体関係者、学識経験者など約200人が出席した。私も縁あって設立発起人の一人として参加している。

国民会議は今後、海外の有識者を招いての国際会議などを開くほか、国内外での広報、PR活動を展開していく予定だ。

産業革命遺産には、稼働中の設備も含まれている。1909年に三菱合資会社長崎造船所(現・三菱重工業)の岸壁に建設されたジャイアントクレーン、1910年に官営八幡製鉄所(現・新日鉄住金)に建設された取水ポンプがそれだ。実に100年以上にもわたって稼動し続けているのだから、驚きである。

今回の世界遺産登録への取り組みは、こうした稼働中の設備を抱えている企業の経済活動とも両立させながら、歴史的な遺産の保存を図るという新しい挑戦でもある。

これら産業革命遺産を世界遺産に登録することは、単に歴史的な遺産を保存するというだけにとどまらず、きわめて今日的な意義があることを再度、強調したい。産業革命遺産は日本のものづくりの原点を示すもので、そこには技術力の歴史的蓄積が詰まっている。世界遺産への登録を目指すことは、我々日本人が日本経済の底力を再認識するとともに、それをあらためて世界に向かって発揮していくことにもつながるものだ。

日本経済が再び元気を取り戻そうと動き出した今こそ、この産業遺産の価値を多くの人に知ってもらいたいと願っている。ぜひ皆さんも産業遺産を訪れてみてください。そして世界遺産登録への支援をお願いします。

詳しくは「産業遺産国民会議」http://www.sangyoisankokuminkaigi.com/

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